エルコラーノ国際声楽コンクールに参加して

 2010年9月に行われた「第4回イタリアオペラ歌手オーディション」で、審査員の推薦を受けてエルコラーノ国際声楽コンクールの準決勝ラウンドに参加された山口安紀子さん(ミラノ在住)は、決勝まで進み見事第2位という素晴らしい結果を残されました。これはこれまで同コンクール始まって以来、日本人歌手の最高位ということです。
 山口さんからコンクールを受けられた感想を頂きましたので、ここに掲載します。





 私はイタリアのミラノに在住して7年ですが、エルコラーノ国際コンクール準決勝に参加させてもらう事が決まり、初めてナポリの方に旅立ちました。

ミラノからは飛行機でナポリ空港まで行き、それからバスでナポリ中央駅に行き、Circumvesuvianaという鉄道に乗りエルコラーノに到着しました。「女の一人旅でナポリは危険だ」と散々友人たちに忠告されていましたが、さすがに噂通りナポリの中央駅周辺は目つきの悪い人たちで溢れており、驚きました。しかしエルコラーノの町はナポリの中央駅とは違い、のどかな感じで到着するとほっと安心しました。何と言ってもエルコラーノの空の青さが美しい事に感動しました。


 準決勝の前日にエルコラーノに到着し、まずすぐに会場の下調べをしに行き、あらかじめ提出した5曲の歌詞を見直したり自分が歌うイメージトレーニングをしたりしました。準決勝は提出曲の中から審査員によって2曲選曲されるということでした。

 準決勝当日は朝の9時半にアルファベットのくじで順番が決まり、Gの姓を持つ人から始まる事になりました。私の姓はYから始まるのでほぼ最後の方だという事がわかりました。歌う順番を待っている時間は6時間以上になりましたが、私はこの順番で運が良かったと思いました。コンクールというのは歌う順番の運もあると思います。審査員の耳は平等だとはいっても、どうしても最初の方は不利な気がします。

 私はオペラ『仮面舞踏会』のアリア死にましょう、でもその前にと、オペラ『蝶々夫人』のアリアある晴れた日に2曲が審査員によって選曲されました。
準決勝で特に意識した事は、この2曲のアリアの人物像とその人物が置かれている状況や感情をそれぞれ表現できるように歌う事でした。


 その日の夕方に決勝に進出する11名が選考され、それぞれに課題曲となっている曲が与えられました。私はオペラ「トロヴァトーレ」の静かで穏やかな夜を提出していたので、それを歌うこととなりました。

 本選はオーケストラ伴奏で、前日に伴奏合わせのリハーサルがありました。一人一人丁寧に十分に時間を取ってリハーサルが行われたので、本選を受けるにあたって何の不安もありませんでした。


 コンクールで歌唱する時間は一曲せいぜい10分以内なので、その短い間に自分の実力全てを出し切るという事はなかなか難しいことです。自分の出番が来るまでにも様々な心の葛藤があるので、その瞬間に完全に集中している状態に持っていくことが私にとっては一番大事なことの様に思います。また私の師がよくおっしゃるのですが「歩いて登場する姿を見て、その人がどのぐらいのレベルを持っているか、口をあける前にわかる。」と。この事を肝に銘じて、自信を持って笑顔で出ていくことにしています。

 舞台に向かうとお客様が温かい拍手で迎えて下さり、その事によって審判を受ける(裁きを受ける)気分が全くなくなりました。その会場にいる皆が、心から音楽を愛し、共に感じようとしていることがひしひしと伝わってきて、私はこの場に立ち歌うことの喜びを感じました。

2位受賞者に私の名前が呼ばれた時は、天にも昇る気持ちでした。お客様もまた本選を共に戦った歌手達も、皆が大きな拍手を下さり、本当に嬉しく思いました。


 今回準決勝から参加の機会を与えて下さったことにより、このように素晴らしい体験をすることができました。外国に住んでいてもなかなかチャンスが巡ってこないこの時代に、日本人の若手歌手に様々な機会を与えて下さる事、大変感謝しております。これをまたバネにして、一段と自分を磨いて頑張っていこうと思います。


山口 安紀子

第4回イタリアオペラ歌手オーディション参加
第16回エルコラーノ国際声楽コンクール第2位

(写真「第4回イタリアオペラ歌手オーディション」より)
 




ページのトップへホームへ