ラトビア国立歌劇場「蝶々夫人」に出演して

2010年5月に、ラトビア共和国の首都リガにある、ラトビア国立歌劇場の「蝶々夫人」の公演に、オーディション合格者の朝倉美和がスズキ役で、寺田宗永がゴロー役で出演しました。同歌劇場に日本人として初めて登場した両氏の、公演を終えた感想、そしてこれからヨーロッパの歌劇場への出演を目指している歌手達へのメッセージを頂きましたので、ここに掲載します。



劇場のスタッフをはじめ、演出家やキャストたちがみな本当に協力的であり、また友好的だったのが印象に残っています。また私たちの『蝶々夫人』の公演では、すばらしい観客に恵まれました。チケットは完売の上、補助席まで出たと聞いています。(日本からも着物姿のお客様が大勢訪れてくださいました。)それとは対照的に公演中は1000人以上の人々がいるとは思えぬ程の静寂、大変集中しているように感じました。

また劇場自体はその起源となる劇場は18世紀から、そしてラトビア国立劇場としても約100年の歴史を誇るなか、多くの名歌手たちが舞台を踏んできました。特に『蝶々夫人』のセットは1926年からそのままを修理しつつ現在まで残してきたとのこと、その伝統ある場に立てたことは本当に大きな喜びでした。

私が育ってきた環境の中で、既に日本人としての振る舞いやメンタリティを知っているというのは有利な点だと思いましたが、“見ている方々に楽しんで頂くことを大切にしたい”という気持ちと、その1926年以来劇場に続く舞台、演出ということもあり 、日本では不自然だと思われる部分を全て修正するより、その伝統ある舞台を生かして、西洋人が見た日本、そして西洋人のバタフライとのバランスを保ちながら、より音楽とストーリーが観客の心に強く伝わるように、と心がけました。

カーテンコールでは、お客様、オーケストラ、スタッフのとても良い笑顔が見え、本当に温かい拍手と歓声を頂くことができましたので”楽しんでもらえる舞台になったんだなぁ。”ととても嬉しかったです。

別の夜には、バレエ公演に招待して頂いたのですが、馬蹄形に素晴らしく装飾された劇場はやはりほぼ満員。美しい舞台とレベルの高いパフォーマンスに感激しました。劇場の外にも川沿いに美しい庭園があるのですが、公演後(午後9時ころでしょうか)にもまだ明るくとてもロマンチックでした!


 今回初めてヨーロッパの歌劇場に出演することが出来たのですが、これまでの勉強の過程も含め、家族の支えは常に私にとって大きなものでした。また今回の出演を、家族をはじめ多くの友人がとても喜んでくれましたし、応援してくれました。この劇場での出演の難しさを良く知るヨーロッパの音楽関係者からも、沢山のお祝いのメッセージをもらいました。

また、ヨーロッパの歌劇場に出演して感じたのは、体調管理も含め劇場に入る前にできる限りの良い準備をするということ。旅で疲れている上に、稽古も大変少なく、指揮者が、演出家が、共演の歌手たちが、色んなことを要求してきますし、またアドバイスもしてくれます。そのなかで自分が何を選択し、どう行動するか。しかし良い準備ができていれば、慌てずに対応できるのではないかということを感じたのも確かでした。そしてとにかくお稽古から本番までスタミナが必要なので、自分の身体を良く知りきちんとした食事をとることがとても大切だと思いました。





朝倉 美和

第2回イタリアオペラ歌手オーディション合格
ラトビア国立歌劇場2009-2010年シーズン「蝶々夫人」スズキ役にて出演




 この劇場に来て先ず思った事が、お客様が生の舞台を構えずに、純粋に楽しんでいる姿に驚きました。まるで映画やTVでも観るかのように、リラックスしているのです。この「蝶々夫人」の公演の数日前に、この劇場のバレエ公演を観劇させて頂きました。沢山の子供達や、おしゃぶりを咥えた赤ちゃんを抱き、座っている母親の姿がありました。もちろん綺麗に着飾っている方も沢山いましたが、この客層の幅の広さには感心しました。質の高い芸術が、こんなに身近にあるんだなぁ、と。
 今回このオーディションへは、海外の劇場でオペラに出演したいという、歌を始めた時からの夢を叶えたかった為、受けさせて頂きました。オーディションに合格してこの歌劇場で歌えることになった時、家族は最初このようなチャンスが訪れとても驚いていましたが、長年の思いがやっと叶うという事で、とても喜んでくれ応援してくれました。

 本番ではまず、ピンカートンを先導して舞台に一番先に入ったのですが、お客様の席も見渡せ感激しました。演技をしながらも、お客様の視線がビシビシ伝わってくるのと、客席の装飾の美しさが目に入り、自分が長年、このような舞台に上がる事を願っていたんだと改めて想いました。というのも、客席と舞台がとても近い印象を受けました。その為、反応がダイレクトに伝わってくるのです。カーテンコールの際は、何かのライブがあったかのように盛り上がり、とても驚きました。こんなにオペラを楽しんで頂けた事に感謝の言葉しかありませんでした。
  また、演目が蝶々夫人ということで、日本人として歩き方や振る舞い等には気をつけていました。また、歌劇場専属の歌手からも、所作について色々教えて欲しいとおっしゃって頂き、やはり、自分は日本人なんだと誇りに思いました。

オペラは出演者だけでは何も成り立たず、公演に携わる様々なスタッフ、そしてお客様がいなければ、この様な生ならではの感動が味わえない。と思いました。気付いた時には、Paldies(ラトビア語で「ありがとう」)と何度も口から出ていました。





寺田 宗永

第2回イタリアオペラ歌手オーディション合格
ラトビア国立歌劇場2009-2010年シーズン「蝶々夫人」ゴロー役にて出演







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